ジャンプを跳びすぎる違反とは
フィギュアスケート・GPシリーズ第4戦スケートアメリカ第2日(13日=日本時間14日、米国・ポートランド)織田がまたもジャンプを跳びすぎる違反で優勝を逃した。記者会見では米メディアにも再発防止策を聞かれ「何も言えない。これ以上はやりたくない」と苦笑いを浮かべるしかなかった。
織田、違反で優勝逃し苦笑い/フィギュア - スポーツ - SANSPO.COM
スケートアメリカは日本選手が男女シングルでアベック優勝、さらに男子はワンツーという、中国杯に続いて素晴らしい成績でした。が、気になるのは織田選手の「ジャンプの跳びすぎ」。「たくさん跳んで点数を稼いだ方がいいじゃん」という単純なものではなく、もちろんルールでジャンプの回数は決まっています。跳びすぎても転倒のような減点はありませんが、採点されないので跳び損とも言えます。
男子シングルの場合、ジャンプの回数としては、
- ジャンプ要素は最大 8つまで(女子は 7つ)
- そのうち、3つまではコンビネーションまたはシークエンスにすることができる。
- 3つのうち 1つだけを 3連続にすることができる。
というルールがあります。これだけなら今回の織田選手も問題なかったのですが、ややこしくするルールが他にあります。
- 3回転以上のジャンプで 2度跳べるのは 2種類まで
- 同じ種類を 2度跳ぶ場合は、少なくとも一方をコンビネーションかシークエンスの一部にしなければならない。
というものです。
ここで、織田選手のスケートアメリカ・フリーのジャンプ構成を見てみると
- 4T
- 3A
- 3F+3T
- 3A
- 3Lz+3T
- 3Lo
- 3S+2T+2Lo
- 2A
となります。(実際に跳んだジャンプ)
しかし、よく見ると 3A が 2度あります。この場合、先のルールにより 2度目の 3A は、「第二ジャンプ以降を跳ばなかったシークエンスの一部」とみなされ、採点上は
- 4T
- 3A
- 3F+3T
- 3A+SEQ
- 3Lz+3T
- 3Lo
- 3S+2T+2Lo
- 2A
となってしまいます(+SEQ というのは第二ジャンプを跳んでいないけどシークエンスとみなすという記号です)。ここで、改めてコンビネーションとシークエンスを数えると 4つあります。コンビネーション/シークエンスは 3度までというルールがありますから、4つめにあたる 3S+2T+2Lo がノーカウントとなります。スケートカナダでは最初の 3A がコンビネーションになっていますから、今回も恐らくその予定で、着氷がやや乱れたために単独ジャンプになってしまったのではないかと思われます。そのような場合、簡単なリカバリとしては「2度目の 3A をコンビネーションに」すれば良いのですが、織田選手はなぜかそうせず、その次の 3Lz をコンビネーションにしてしまったのです。それでも最後の 3S+2T+2Lo を 3S 単独にするのなら、ルール上は問題ありませんし、3S 単独ジャンプ分の点数はもらえますが、コンビネーションにしてしまったら、どんなに綺麗にジャンプを跳んでも 0点になってしまいます。
国際試合に出てくるレベルの選手でも、たまーにこういうミスはあります。が、織田選手は他の選手に比べて違反の回数が多すぎるのです。アメリカのメディアに突っ込まれるのも致し方ないというところでしょう。