lovely::memo

メモとか日記とか

あんずのど飴

冬川智子さんの漫画に出会ったのは、まだ彼女のブログで公開されていた「水曜日」だった。その後、その「水曜日」が書籍化されることになったのだが、タイトルはなぜか「イケてない10代」に。ハァ?と思いつつ、書籍デビュー作なわけでもあるので応援を兼ねて買ってみたが、Web で先に読んでいたせいかあまり印象に残らない。面白いことは面白いんだけど、内容的に何度も繰り返して読むタイプの作品ではなかったと思う。正直に言うと、書籍を読んだことで彼女の漫画への興味がかなり薄れた。
それが良い方に覆されたのが「マスタード・チョコレート」。書店で見つけたのはたまたまで、元がケータイコミックで、そしてケータイコミックを描いていることも知っていたのに読んでいなかった。その場では買わなかったけれど、ずっと気になっていて、結局「マスタード・チョコレート」を買った。良かった。泣いた。
マスタード・チョコレート」も淡々と物語が進むのは「水曜日」に似た匂いを感じるが、しかし方向性はまったく違う。絵も個性的だしケータイコミック用にすべてのコマのサイズが同じという制約があるにもかかわらず、読み始めると気にならない。そして何より、主人公にどうしようもなく共感してしまう部分があるのだ。共感する部分をつい自分と重ねてしまい、泣く。だから、好きな作品ではあるけれどつらい作品にもなった。
その上で、「あんずのど飴」である。物語は主人公が高校のクラス会に向かうシーンで始まるが、メインは高校生活である。高校入学で初めて出会った主人公と友人の仲良くなる過程と距離が離れていく過程が淡々と描かれる。淡々としていても自分の過去と重なる部分があり、そうすると私にはとてもリアリティのある物語になる。友人と別の友人がおそろいのペンケースを持っていることに主人公が気づいてしまったくだりは、あるある過ぎて一瞬息を呑んでしまった。
女子高校生なのに楽しいイベントがあるわけでもない、恋愛の話もでてこない、読んでいるとつらくなるけど、「マスタード・チョコレート」共々こういう作品に出会えて良かったと思う。


あんずのど飴 (IKKI COMIX)
あんずのど飴 (IKKI COMIX)
  • ASIN: 4091886140
  • [コミック]
  • 価格: ¥ 700
  • 小学館
Amazon.co.jp で詳細を見る

水曜日 (IKKI COMIX)
水曜日 (IKKI COMIX)
  • ASIN: 4091886159
  • [コミック]
  • 価格: ¥ 700
  • 小学館
Amazon.co.jp で詳細を見る